4月19日の、書評:伊坂幸太郎「魔王」 



 前から読もう読もうと思っていた伊坂幸太郎の「魔王」、ようやく読みました。読んだからにはココに感想を載せるべきなのでしょうが……うーん、なんとも捉えどころの難しい作品でした。強いて言えば、超能力と地方と政治論のお話です。

 物語の前半は、息を止めて集中している間は他人に自分の考えたセリフを言わせることのできる「腹話術」の能力をもった安藤(兄)が主人公で、新進気鋭の若手政治家の犬養の言動に、そしてその犬養の言葉に乗せられ加熱していく群衆に得体の知れぬ不安を感じ、どうにかその不安を拭おうと翻弄する、といったもの。

 後半はそれから5年後の話で、10分の1までを1にする能力(詳しくは読んで下さい)を手に入れた安藤(弟)の潤也が主人公。首相になった犬養と、その政策により少しずつ変わっていく日本の様子を、潤也の妻の詩織視点で語られる、といったもの。

 まあ、ストーリーは在るようで無いようなものだと思います。この作品で作者の伊坂さんが言いたかったことは「考えろ」ということだと思います。安藤(兄)も、犬養も、そして最後には潤也も、少々しつこいくらいに「考えろ」と言っています。日本の未来について考えろ! 今成すべきことを考えろ! と。


 正直自分は、現在サンデーで連載中の漫画版のような話だと思っていたのですが、意外や意外、大部分が政治論だったりします。なので、ちょっと取っつきにくい部分はあるかも。佐伯的には、面白いかと問われれば「何かのためにはなった」って感じです。

 ああ、余談ですが漫画版「魔王」は何気に面白いですよね。原作では主人公達は立派な社会人なのですが、そこを高校生という設定に変え、他の伊坂作品の登場人物もフル動員させたりして、なかなかエンターテイメントな仕上がりになってます。

 小説の漫画化だったり、漫画の映画化だったり、そういったのがなかなか成功しないのは元の世界観を引きずったまま中途半端に変化を加えるからだと思うんです。でも漫画版「魔王」は設定やストーリーをガラッと変えておきながらも大事な部分はしっかりと残ってて、ちゃんと「魔王」になってるんです。たとえ登場人物に「蝉」が現れたとしても、犬養が自警団だったとしても、安藤(兄)が感じている不安とか、ひしひしと伝わる恐怖とかは同じなのです。漫画の帯に伊坂さんが載せた「この作品がこんなに面白くなるなんて!」という言葉は、案外単なるお世辞だけではないと思います。

 まあ、漫画版を見て興味を持った人は読んでみても面白いんじゃないでしょうか(順序が逆だろ)。

 では最後に、作中にしつこいくらいに引用されていた宮沢賢治の詩の一片を載せて終わりとします。考えろ考えろマクガイバー!


諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか


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11月3日の、書評:伊坂幸太郎「砂漠」 


 さて、復活したてな橘ですが、ブランクが空きすぎて何を書けばいいかよく分かりません。この週末には一連の出来事があったのですが、それは明日の日記にまとめて書くとして。

 今日は例のインチキ書評です。読んだのは、随分前に買ったのに開いてすらいなかった伊坂幸太郎さんの「砂漠」を。

 以下、帯裏より。

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「大学の一年間なんてあっという間だ」 入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン……。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で、超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。

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 帯の一番はじめにも大きく書いてある、冒頭で登場人物の一人西嶋が言う「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」という台詞が印象的な一冊。主人公はいつものパターンの、一人称が「僕」で、物事をどこか冷めた視点で見る感じのキャラクターですが、ところがどっこいストーリー的には非常にオーソドックスな青春小説です。ただし、随所に伊坂さんらしさが散りばめられています。

 とにかく、こいつらの関係性が羨ましい。現在進行形で大学生活を送っている自分が言うのも何ですが「こんな大学生活がしたかったな」と。そう思わせる要因の一つは、なんていってもアレでしょうよ。

 そう、女の子の存在。

 なんか大いに誤解を招きそうな発言で申し訳ないのですが。でも本音です。男同士の熱い友情ってのも別に悪い訳じゃないんですが、やっぱり多くの人が夢見るキャンパスライフって奴には異性の存在は欠かせないと思うわけです。

 橘の所属する工学部はそもそも女性の割合が極端に少なく、さらには橘たちの代ではゼロときた。だから悪いというわけでもないですが、やっぱり憧れるわけですよ。工学部のとある先輩が残された名言が、橘の心情を如実に語ってくれています。

「こんなのオレンジデイズじゃねえ!!」

 まあ橘がおかれている個人的な状況はこれくらにするとして、さすがは伊坂さんと言ったところでしょうか。みせ方が上手くて、ぐんぐんと話の中に引き込まれてしまいます。こういう形の話なので特にはその存在を期待していなかったトリックの方も、ちらほらと。ラストなんかも綺麗にまとめてくれて、くはー、上手いなー、と感嘆の声を上げっぱなしな一冊でした。

 帯には五人と書いてましたが、主要登場人物は6人いまして。まあ最後の一人は大学生ではないので除外したのでしょうが、どうせなら最初から6人で話を展開してくれたらなぁ、っていうのが唯一納得いかない点でした。

 友人の伊坂さん評は「なにか小難しい」と手厳しいものでしたが、これはそんなのを全く感じさせませんでした。伊坂幸太郎、気になるんだけどなかなか手が伸びないなぁ、なんて思ってる方にお薦めの一冊です。


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